ユニバーサルデザインは、あらゆる人が使用しやすい製品や環境を設計することを目的としたデザインの理念であり、障害者や高齢者、子供などの様々な人々のニーズを考慮した設計を行うことを重視します。日本におけるユニバーサルデザインの歴史について説明します。
1964年に東京オリンピックが開催された際に、多くの外国人が日本のトイレに驚きを示しました。それまで日本のトイレは、床が湿っていたり、和式であったりと、外国人には使いにくいものでした。このことから、日本のトイレの改善が求められるようになり、ユニバーサルデザインの考え方が浸透するきっかけとなりました。
1970年代には、障害者団体や社会福祉団体が、社会的弱者の立場から、ユニバーサルデザインを求めるようになります。その後、1985年には「障害者基本法」が制定され、障害者の社会参加の促進が求められるようになりました。このことから、法制度に基づくものとして、日本に定着していきました。
1991年には、「バリアフリー新建築設計マニュアル」が策定され、バリアフリー(障害者に配慮した)な建築物の設計に関する指針が示されました。このことにより、ユニバーサルデザインは、建築分野においても普及するようになりました。
2000年には、「日本版デザイン・フォー・オール(DfA)」が策定され、製品や環境のデザインに関する指針が示されました。さらに、2006年には、「ユニバーサルデザイン法」が制定され、国や自治体がユニバーサルデザインの推進に取り組むことが定められます。
現在では、日本ではユニバーサルデザインを取り入れた製品や環境が増えており、障害者や高齢者、子供など、様々な人々に配慮した設計が求められるようになっています。
黎明期(1970〜1980年代)— バリアフリーの始まり
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1970年代:バリアフリーの概念が登場。段差解消・スロープ設置などが広がる。
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1979年:「身体障害者福祉法」改正で公共建築物のバリアフリー化を促進。
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1981年:国際障害者年。「完全参加と平等」がテーマに掲げられる。
導入期(1990年代)— ユニバーサルデザインの概念が日本へ
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1994年:「ハートビル法」制定。公共・商業施設にバリアフリー義務化。
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1995年:阪神・淡路大震災を契機に「誰もが使いやすいデザイン」が再認識。
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1999年:「交通バリアフリー法」制定。交通分野へのUD導入が進む。
発展期(2000年代)— 社会実装と企業の取組
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2001年:横浜市・神戸市などが「ユニバーサルデザインタウン」構想を開始。
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2000年代前半:パナソニックやトヨタなどがUD家電・車を開発。
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2006年:「バリアフリー新法」成立。公共交通・建築物の統合的整備を促進。
成熟期(2010年代)— 法制化と社会への定着
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2010年:「高齢社会対策基本法」にUD推進が明記。
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2013年:「障害者差別解消法」制定。合理的配慮を義務化。
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2015年:東京オリンピック・パラリンピック準備でUDが全国的に進む。
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2017年:「ユニバーサルデザイン2020行動計画」策定。国の政策として明確化。
未来期(2020年代〜)— デジタルと共に進化するUD
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2020年以降:デジタルUD(ウェブアクセシビリティ、DX対応)が進む。
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2025年:大阪・関西万博。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマにUD実践。